「どうしたん?顔色悪いで。ファンに追っかけ回されたか?」
登校して、真っ先に顔を合わせた阿部やん、こと阿部 沙野子に指摘されて首を横に振った。
阿部やんとは、高校入ってからの付き合い。結構美人なクセしてサバサバした性格で、何より他の女子みたいに媚びたりしない。だから唯一の親友って所だ。
そんな阿部やんの顔が急激に近づいて来る。
「違うならなんや?」
「いや、別に…」
親友だからってさすがに言えないよ、伊原の事。
そんな風に考えていると、
バン!!
けたたましい音が教室中に響き渡った。
周りが静まり返り、皆の視線が阿部やん一人に降り注ぐ。
「言われへん事なんか…」
阿部やんの目が前髪で影になって見えない。
「あ、阿部やん…机壊れるよ??」
「うっさい!!そんな事どっちでもええねん」
阿部やん、怖い(汗)
やっぱり言わなきゃなのかぁ〜?
皆が見てる事だし、まぁまぁ、と阿部やんを宥めながら
「後でちゃんと話すから、ね?」
と、こっそり耳打ちした。