「まさか政府か!?」
父さんの顔が一気に青ざめた。
「情報では来週からの筈…」
父さんは少し躊躇したが、意を決してドアを開けた。
「…どうも、夜分遅くにスイマセン。少し聞きたいことがあるんですが…」
そこには、いかにも怪しい黒服の男が立っていた。
男の横には、赤毛で綺麗な青い目をした男の子がいた。
「一体なんなんですか?」
父さんはかなり強い口調だった。
「そんな身構えないでくださいよ。」
おどけた口調で男が言った、しかし男は急に目つきをガラリと変えて話しだした。
「実はある方からの依頼で、アナタの事を調べさせていただきました。
…お名前は…ゲイル・コレイド…
ま、スラム街出身のアナタにとって名前はどうでもいいでしょうがね。
で…10年前、アナタ奥さんと…南部に駆け落ちしましたよね。」
「貴様は一体何者だ!!」
父さんが大声で吠えた。急にいろんなことを言われて混乱していた。
「まぁまぁ、落ち着いて。
で…奥さんは名門グランシア家の三女イリーナ様ですよね?
面影が残ってらっしゃる。」
「なっ…」
父さんの顔から血の気が引いていた。
「貧民と大貴族の禁断の恋!!
スゴいですね〜切ないですね〜ロマンティックですね〜」
男が物凄い勢いでまくし立てる。
「貴様ぁぁ〜」
父さんが男の胸ぐらを掴んだ。
僕は父さんの足を引っ張って必死に止めようとした。
でも男の連れの子は微動だにせず、ひたすら僕のことを、吸い込まれそうなその青い瞳で見つめていた…
「子供の前で暴力はいけませんよ。
それに私が聞きたいのは、アナタの裏の顔のことですよ。
…アナタこの辺で反政府グループのリーダーやってるでしょ?」
父さんはまるで、人形のように固まって動かなくなってしまった。
あの優しい目はまるで怪物を見ているかのような恐怖に満ちていた…そして瞳には固まった父さんを見てニヤつく男の顔が映っていた…