梶原と奈緒は何度かデートを重ね、恋人同士らしくなってきた。
「奈緒、俺、今日もうあがりだから、待ってて。飯食ってこ?」
夜9時、奈緒は約束があった。
「…ごめん…今日ちょっと友達と約束があって。」
罪悪感…
「そっか。んじゃあ、土曜日な。」
毎週、土曜日の日中は梶原と休みを合わせていた。
「うん。お疲れ。」
レストランを出た通り沿いにハザードランプが点いた哲也の車が見えた。
奈緒は駆け寄る。
「お疲れ様。」
運転席から哲也が降りて奈緒の方へ歩いて来る。
「哲、とりあえず、おなか空いたな…」
「俺はとりあえず一発…う゛っ」
言いかけたところで、奈緒は哲也の腹にパンチした。
哲也は、近所のファミレスの駐車場に車を停めると、ドアを開けようとする奈緒を引き寄せた。
「こらっ。哲…」
キスしながら、奈緒の服の中に手を忍ばせる。
「哲ってば…!…後ろいこ?」
「…だね…丸見えだよねここじゃ…」
哲也の車は7人乗りで、2人はいつも、一番後ろのシートでセックスしていた。
「哲、私、彼氏できたんだ。」
ファミレスでサラダを食べながら奈緒は言った。
「マジで?んじゃあ、俺とこんなんは、まずいよな?」
「…やっぱ、普通そうだよね…」
言わなければ良かったかな…
「奈緒がしたいようにしていいよ?」
私のしたいように?…
「私は…」
哲と離れるのは嫌だ。
「哲はどうしたい?男がいる女とはセックスしたくない??」
哲也は言葉を選んだように言う。
「奈緒は彼氏ともセックスするんだろ?そしたら、俺は用無しなんじゃない?」
そういう事を聞きたいんじゃない。
やっぱり、哲は私の事をセックスの対象としか考えていない?
私も、嫌われるのが怖くて自分の気持ちを素直に伝える事ができなかった。
「私は彼氏ができても、哲とセックスしたいよ。哲とすると気持ちいいもん。」
こういう形でしか、一緒にいられないなら、これでいいと思った。