「そやけんな…」
が、彼の口グセ。
私は中学時代、愛媛に住んでいました。
父親の仕事の都合でした。
「なんで愛媛ぇ…?」
私はこの質問を父に何度したことでしょう…
父の転勤先は香川県だったのですが、愛媛に親戚がいるということで私達一家は愛媛に住むことになったのです。
1時間30分かけて仕事場に行っていた父は『いい運動不足解消になる』なんて言ってたけど、正直きつかったと思います。
当たり前のように私は新しい中学校に転校。
やっぱり、みんな方言。
たまに何を言ってるのか分からないこともあった。
「ねぇ、なんで転校してきたん?」
「…、お父さんの転勤で…。」
「へぇ…転勤…。友達と分かれてさみしいやろぉ?」
「うん…」
「でも、今日からはあたし等が新しい友達やけん!」
転校初日、早速友達ができた。
「ありがとう。」
新しくできた友達と楽しく会話していると、一人の男子が声をかけてきた。
「“しんた”さんやっけ…?」
「…えっ??」
「アンタの名前、しんた??」
「…あの、“しんた”じゃなくて、真田、“さなだ”なんだけど…」
「あっ、すまん!“さなだ”やなっ。真田、真田。」
「なんなん、かつぴー、初日からこんな可愛い女の子の名前間違えとるやんっ」
“かきぴー”……?
「えっ全然…あたし気にしてな…」
「そやけんな、そんなん、言われても覚えとらんし」
「覚えぇやぁ」
少し話についていけないあたしは、“かきぴー”君とやらに先生が呼んでいると教えてもらった。
「あの、ありがとう…」
「えぇよ、別に。」
そう言って“かきぴー”と呼ばれている男の子は、どっかに行った。
あたしは、先生のもとに行った。