哲也は席を立つ。
「奈緒、出よ?」
哲也は奈緒の荷物と伝票を持ちレジへ向かう。
「ちょっ…哲?!」
車に乗りこむとすぐに車を発進させる。
「哲?どこ行くの?」
「ラブホ。」
哲は奈緒の方を見向きもしない。
「……」
2人無言になる。
部屋に入ると、哲は奈緒の腕を引き、ベッドに押し倒した。
「哲??ちょっと待ってよ!」
今までにない、乱暴なキスと愛撫に奈緒は戸惑った。
「…やっ。待って!哲!?」
無理やりに奈緒の服をまくりあげ、スカートの中に手を入れ、下着を脱がす。
「奈緒が望んだ関係だろ?」
コンドームを着け、奈緒に覆いかぶさる。
「…痛っ…!」
それでも、哲也はやめなかった。
奈緒が抵抗する事を辞めたのに気がつき、哲也は奈緒の顔を覗き込んだ。
奈緒は顔を横に背け、涙を流している。
哲也は我に返った。
「奈緒…ごめん。」
哲也は、奈緒から離れ、奈緒に布団を掛ける。
「…平気。続けていいよ?」
「帰ろ。」
哲也は服を着始める。
奈緒も何も言わずに服を着て、髪を整えた。
奈緒の家の前に車を停める。
「…ありがと。送ってくれて。…じゃね。」
車のドアを開ける。
「…奈緒。」
哲也は奈緒に触れる事なく呼び止める。
「…ん?」
いつになく、真剣なまなざしで、哲也は言った。
「俺ら、もう、会わない方がいい。」
奈緒が予想していた言葉。
そして一番恐れていた言葉。
嫌だと、一言いえば、何かが変わっていたかもしれない。
けれど、それさえも恐れて、奈緒はその言葉を受け入れるしかなかった。
「ん。そうだね。」
「…今日は本当にごめん。……彼氏と幸せになって。」
哲の言葉に胸が張り裂けそうになった。
「うん。じゃね。」
哲也の車に背を向け、奈緒は家に向かった。
哲也は、しばらく車を発進させることなく、ハンドルに額をつけてうつむいていた。