航宙機動部隊第二章・25

まっかつ  2007-05-12投稿
閲覧数[513] 良い投票[0] 悪い投票[0]

パレオス建国暦四0七年【銀河元号二一八八年】新年期第三日―首都・第四惑星ティヴィタヴェキア―\r
その中枢シテにて、太子党に反対するデモ行進が行われ、三0万を越える群衆が参加した。
運動は全星に波及し、合計するとこの日だけで実に七00万人、総人口の一割を上回る星民が何らかの形で異邦よりの闖入者達への抗議に佐袒したのだ。
更に四日にも、表面上やや下火になったとは言え凡そ五三0万の群衆が各地の街頭を練り歩いては埋め尽した。
星邦史上これ程大規模な市民運動は、同建国暦一星紀の土地・資源分配闘争以来かつてなく、それも人口の少ない時代であった事を考慮すれば、未曾有の事件に見舞われたと言うべきだった。
全星が騒然とした緊張に覆われ、ヒステリックな昂奮が六三00万星民の胸と耳目に充満しては扇動を続ける。
しかし幸い深刻な事態は回避された。
この事あると予測していた星邦議長ペアリーノ=グィツチャルディーニ氏が、行政・司法・マスコミと事前に協議しマニュアルを作成。
かなり綿密な対策をうっていたのだ。
過激な報道は控えられ、一早く配備された私服警官達が通りを誘導・管理し、自治体サイドはそれぞれの抗議団体の長と違法行動を共に取り締まる提携を結んで対処した。
結果、逮捕・補導は二日間併せても僅か三九件で、しかもその七割が便乗した部外者による軽犯罪だったのだから、双方に取ってある意味奇跡的なまでに、そして成功裡に反太子党キャンペーンはひとまず終息したのだ。
これは改めてグイッチャルディーニ氏の政治手腕の確さを証明する良い機会になっただろう。
しかし、取り戻された平穏が不気味な胎動の前触れになる可能性は充分に有った。
まず、紙面・電文による署名活動の方は反って加熱気味で、中央政府だけでも二二一0万名・司法省宛てには一五八四万名分が一挙に殺到し、ネットワークが四度もパンクする程の騒ぎになったのだ。
その全てが同じ言葉を語っていた―拉致された子供達を救え。太子党共を我等が法で裁くべし。政府は毅然たる決断を!

規律や治安は保たれていても、これまでに無いナショナリズム・民族的自尊心のマグマの流れは沸々と煮えたぎり、噴出するのを今か今かと待ち構えているかの様だった。
今回の運動のモラルの高さも、その裏返しだとすれば、だから油断出来ないのだ。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 まっかつ 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ