「やべッ、寝過ごしたッ!」と、俺は言いながら、布団から跳ね起きた。
洗面所に駆け込み、顔を洗い、歯を研く。寝癖のついた髪は…整えてる暇なんかない、急がなくちゃ。
靴ひもを解く。結ぶ時間なんてない。
遅刻なんか、してられない。彼女とのデート。
彼女とのデートに間に合ったのは、今まで一年付き合ってきて、?、?回…要するに俺は遅刻魔だ。
でも、今日は遅刻なんかできない。だって、今日は彼女の誕生日。
昨日の夜、色々演出まで考えたのに、それがあだになるなんて。
停留所を発車したバスを必死に追い掛けて、無理矢理乗せてもらった。
乗客から怪訝な目付きで見られたが、そんなのは気にしていられない。
一瞬でも早く、一秒でも早く待ち合わせ場所へ。
もう遅刻は、確実だ。
息があがってる。
運動はしとくもんだな。そう思いながら、外を眺めると、一匹の犬がガードレールにつながれている。
どうやら、主人は犬の目の前にあるスーパーの中にいるらしい。
スーパーから客が出てくる度にお座りの状態から立ち上がって、そわそわしている。
なぜか、早く彼女に会いたくてそわそわしている俺と似ていて、笑ってしまった。