光
年中変わらない日照り。延々流れる甘い楽器の音。岩壁、そして海に囲まれた村だった。狭い村だが、ゆったりとしている、暖かい村だった。
「ショウ!また来たぜ!」と少年は、透明の壁のような波を白いサーフボードに乗り滑走していた。
「いいよな。ヒカルは。なんでこっちは波が来ないんだよっ!」とこちらの少年は苦戦している。 2人はサーフィンが好きで、兄弟のようにいつも一緒にいる14才の少年だった。ショウは元気な普通な少年だが、ヒカルは違った。
ショウの家の隣に住んでいるのだが、実の親とは住んでいるのではなく、このカコ村の隣の町の対闇教団から対闇兵器として、ヒカルはこのカコ村に送られて来た。
ヒカルは物心つく前にこの村に送られて来たのだが、ヒカルを引き取った育ての親にこの事実を伝えられていた。
ヒカルは普通の人と違い、対闇の光の力を持って生まれた。その力はヒカルだけでなく、対闇教団の一族の人間ならばほとんどの人間がその力を持っていた。 少し昔にカコ村がある国、ムスト共和国の中心に闇の力を持った魔族が侵略し、支配した。その魔族達により国は徐々に侵されて、ムスト共和国の隅にあるカコ村にまでもその魔の手が及ぶようになり、ヒカルは今までのような生活が出来なくなっていた。
「また来たんだな…。」とヒカルは早歩きで浅い海を歩き、海から上がった。「また来たのか、ここんとこ毎日来るよな。じゃあ俺は村のみんなに避難するように伝えるぜ。頑張れよ、ヒカル!」とショウも海から上がり、サーフボードをそこに置き、少し急ぐように走った。
「今日のは少し大きいな…」と独り言を言うヒカルの前には黒く、固そうな体をしたトカゲのような生き物がそこにいた。大人ぐらいの大きさだった。
ヒカルとその生き物は岩壁の割れ目である唯一の村の出口にいた。周りには岩壁以外何もない。
「消えろ!クソ魔族!」と細く、汚れてボロボロな剣を振りかざした。その剣撃はカン、とその固い皮膚に弾かれた。 魔族は、素早い動きと鋭利な爪で攻撃してきたが、ヒカルは、光る盾を瞬時に出し、攻撃を避けた。「ライト・シールド!」
「剣はきかなくてもこれなら…」と丸い光の盾を魔族に投げた。「ライト・シールド・フリスビー!」その光る円盤は魔族の頭に命中し、魔族は煙になって消えた。