数分後― キングダム一同は揃ってメインストリートへ来ていた。換金した大量の札束から半分をレイラに渡し、ロシアンが呆れ顔で呟く。
「命あってのギャラじゃなかったのか?」
分厚い札束を数えながらレイラは満面の笑みを浮かべた。
「額によるわよ♪こんだけあれば命も買えるわ!」
「そーかぃ。まぁ対ドラゴン用の鎧でも買ってくれ。お前らもこれで好きなもん買えよ。何が役に立つかわかんねぇからな。はい、解散!」
ロシアンがパンと手を打つと同時に、各自バラバラと歩き出す。
ジルファは薬草や薬品が多数揃っている「ポーションストリート」へ、レイラはハレを連れて色々な店が並ぶ「メインストリート」へ、ラスタはレイラが見えなくなったのを確認してから特別な飲み屋が並ぶ「ピンクストリート」へと消えて行った。それらを見届けてからロシアンも歩き出した。行き先は今来た道。慌ててサラがついてくる。
「ロン、おうち帰るの?」
「帰らねぇよ。」
「じゃあどこいくの?」
「買い物しに行くんだよ。」
「どこに?」
「ここ。」
そう言ってロシアンが指したのは、「ダミアンストリート」にある闇市場の中でも一番有名で一番危ないと言われている<バン・デンジャーの道具屋>であった。
毒薬・呪具・暗器など危険なものが所狭しと並ぶ店内をスイスイと泳ぐ様に歩くロシアン。あっと言うまに店の奥に着くと、誰もいないカウンターの奥へと声をかけた。
「おい、バン。出てこいよ!」
ざわっ―\r
その呼び掛けにすぐ反応したのは店内にいた他の客達である。
こんな危険な店のオーナーを務める男、バン・デンジャー。彼自身ももちろん有名な危険人物だ。暗殺者や魔人などと噂されるその男を呼び捨てにするなど、考えられない事なのだ。だがロシアンは人の目などまったく気にならないのか、涼しい顔で奥を見据えている。と、突然奥からヌッと男が顔を出した。フードつきのマントをはおった体はいやに細長く、長い前髪の下に見え隠れする瞳は異様に鋭い。薄い唇が微かに歪んだ。
「ロシアンか。何の用だ。」
「買いもんに決まってんだろ。ドラゴン退治に行くんだよ。」
「ドラゴン退治?」
少し興味をそそられたのか、音もなくバンはカウンターへと近付いてきた。
会計の時ですら下僕らしき妖獣にやらせ、ほとんど姿を表さない店主があまりにもすんなり出てきたので、他の客はただただ目を見張るばかりである。