泪、、、?

 2007-05-15投稿
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真っ白なチューリップは彼からの最後の贈り物だと思っていた。
『ありがとう』も『さよなら』も言えなかった。彼をどれだけ好きだったのか失ってから気付いた。本当に失ってから…。彼を失った日から、私は泪を流すことがなくなった。きっと、彼はもっと泪を流したかったと思うと私は泣けなかった。

あれから8年。彼への想いを抱えたまま私は毎日を過ごしていた。最後の2人の時間となったあの日、彼は笑っていた。笑って私を送り出してくれた。
私が見た最後の彼は笑顔だった。私の大好きだった彼の笑顔。最後まで優しかった…。
泪が出た。その瞬間、体が温かくなるのを感じた。彼は、寒がりの私にいつも寄り添ってくれていた。
あの暖かさだった…。彼がいつも寄り添ってくれていた右肩をふっと見上げた…。彼が笑って私を見ていた。笑って…。瞳にはうっすらと泪が見えた。彼も泣きたかったんだと思う。でも、私を心配して泣かなかったんだと思う。
最後まで心配させてごめんね。あの日、貴方を傷付けてごめんね。何も分かってない私でごめんね。最後まで側にいてくれてありがとう。好きになってくれてありがとう。2人の時間をありがとう。
伝えたい気持ちが沢山あった。言葉にできない気持ちが沢山あった。

電車が揺れた瞬間、私は目を覚ました。
いつの間にか寝ていたみたいだった。
止まった駅は私の知らない街だった。私は急いで電車を降りた。
顔を上げた瞬間、目の前の光景に泪を流した。目の前は色とりどりのチューリップの花が並ぶ花屋があった。
偶然かもしれない。
ただの勘違いかもしれない。でも、私は彼からの最後の贈り物だと思えた。だから…。
私は泪を拭き、笑ってその場を後にした。

彼が泣いた以上に笑えと言った最後の言葉を思い出したから。



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