居眠り姫の起こし方11

あこん  2007-05-16投稿
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おやつにしてはちょっと多い、大量の菓子パンを二人で片付けて一息つく。
和真は慣れない甘い物の詰めすぎで、由良は満腹からくる眠気でダウン寸前だった。
「うー、無理、寝る。」
いつもの事なので和真は特に何も言わず頷いた。
むしろ和真自身が危険な状態だった。
(あー、胃がもたれる。)
口の中にまだクリームが残っている感じがして落ち着かない。和真は口直しの為に再度購買へ向かうのだった。

「…ん、あれ?」
由良が目を覚ますとそこにはブルブル震える和真。
下校時刻が迫っており、いつもなら和真によって起こされる時間である。
(習慣、てのは恐ろしい事。)
自然と起きてしまったのだ、睡眠好きの由良が、定時に。
それよりも、和真の様子の方が由良は気になっていた。
凶悪な顔付きに似合わず、人の良いこの男が、由良を起こさなかったのだ。
更に小刻みに震えている。まるで小型犬のように。
「…あんたは大型犬派じゃなかったかしらね。」
「…え?あぁ、由良。起きたのか。」
目が虚ろだったので由良は一瞬たじろいだ。
「本気で怖いんだけど。」
一般人が見れば、イっちゃった目という奴だろう。
(薬物使用者みたいね。見た事無いけど。)
よく見れば、和真は、へへっへへへ、と不気味に笑ってまでいる。
(う、うぅ怖い。)
しかし負けてはいられない。由良は意を決した。
「えーと、何かあったの和真?」
「うふ、ふふふ。聞きたいか?」
「取り敢えず怖いから笑うのやめて。」
恐怖に勝てず、由良は目を逸らす。耳はばっちりと、和真の喜々とした声を取り込んでいたが。
「…なんか嬉しい事あったの?」
「あぁ!お前のおかげだ!」
和真の手には大事そうに握られた緑茶のボトルが。非常に苦い事で有名なお茶である。ネタで生産してるんじゃないかというくらい。
「口直しの為にこの苦茶を買ったらな、またも偶然白木がいて、十数分話し込んでしまったぜ!」
和真、柄にも無く興奮している。
「そ、そりゃよかったね。」
「菓子パン沢山食った話をしたら、呼んでくれたらよかったのに、とまで言われたんだ!」
「そ、そぉ。」
由良は、和真と知り合ってからこんな彼の姿を見たことはなかった。
「これっていいのか?いい感じか由良?」
どう答えたものか、下校時刻まで眠りもせずに由良は考え続けた。



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