君は、今、どうしてるのかな。なんて。
凍える声でつぶやいても、見えるのは白い息だけ。
やむ気配のない雪が、視界を真っ白に染める。
だから何も見えないはずなのに、どうしてだろう
君の笑顔が見えるのは。
大きなボンボンのついた、あったかそうな赤い帽子に
周りの景色に溶けてしまいそうな、白いダウンコート。
色白の君のほっぺは、寒さでリンゴみたいに赤く染まっていて
触ると、
手ェ、あったかいよね。
と笑った。
雪は未だ止まない。
君は子供みたいに、新雪に足跡をつけていく。
鼻歌うたいながら、軽やかに前を歩く。
君は振り向くと、奥二重の鳶色目を輝かせて、雪玉を投げつける。
驚く暇もなく頭は砕けた雪で真っ白に染まって
君は最高に幸せそうに笑う。
雪が少し弱まる。
君と出会わなければ、こんな不幸にはならなかったのかな。
違うね、と、心の中の自分がつぶやく。
君がいなかったら、きっとこの世で最高の幸せを知らなかった。
だからこの苦しみは、喜ぶべきことであって、悔いることじゃない。
そうだろ?
雪が止んだ。
積もった雪を払うと、下から黒い墓石が現れる。
深い深い幻に隠されていた現実。
赤いほっぺも、笑顔も、強い北風に吹き飛ばされて消える。
でも凍りついた感情も、いつか溶けるんだろうか。
まだ、この情けない笑顔の消えない自分を
君は笑って許してくれるだろうか。
雲が流れて、澄み渡った空が見えて
胸の一番奥が、ギュッと苦しくなった。
でもきっと、雪が溶けるころには
流れない涙も、流せるようになると、
そう、信じている。