魔族の女
「どういうことなんだ?エミリア!」と問うヒカルの前には、巨大化した球形の魔族、そしてさっきまで後ろでヒカルの援護をしていたエミリアが立ちはだかっていた。
「私はね、一年くらい前に生まれたの。見えないでしょ?姿はアナタと同年代くらいだもの。」とエミリアは暗い表情で言った。
「なんの話だ?全く意味が…」とヒカルはまた問う。
「私は生まれた時から全てを知っていた…。自分の使命を…アナタを殺すことを…。恨まないで…ヒカル…。」と言ったエミリアの眼は、より深くなっていた。そしてエミリアが手を合わせ、何か言おうと口を開きかけた時だった。「フリーズ!」という声がして、冷気がヒカルを横切り、次の瞬間には、顔半分以外氷に包まれて固まっているエミリアがいた。
「!?」ヒカルは状況が読めなかった。そして呆然としているヒカルの隣には、案内人だったリリが自信に満ちた眼をして立っていた。
「大体予想はついてたの。だから隠れてついて来てたのよ。ヒカル、あなたはその魔族を倒して!」とリリは言い、ようやくヒカルは状況を理解した。「なるほど!魔族だったのか…エミリア…。」とヒカルは少し悲しい顔をして言った。 ヒカルは剣を構えた。巨大化した球形の魔族が攻撃をしてきたがヒカルは避けることで精一杯で反撃が出来なかった。 「くそ!見てろよ…。」と言うヒカルは右手に持っている剣を、背負っている鞘にしまい込んだ。 そしてヒカルの両手両足が光った。
「ライト・バトル・スタイル…四肢舞!〈シシマイ〉」
そして魔族の鋭い爪での攻撃を光る左手で、素手で受け止めた。そしてヒカルは高くジャンプし、空中回し蹴りで反撃した。
魔族は吹き飛びそのまま魔族は煙となり消えていった。魔族を倒したヒカルはエミリアの方を見ると、やはりエミリアは動けないでいた。
そしてエミリアが、「私を刺して…その剣で…私を闇に還して…。」と言い、ヒカルは数秒黙っていたが、静かにうなずき、剣を抜いた。 「出来ればこんな形でアナタに会いたくなかった…普通に人間としてアナタに会いたかった…ヒカル…。」と言ったエミリアを、涙をこらえながらヒカルが剣で貫いた。エミリアは笑みを残し、黒い煙となり、消えた。 「仕方なかったのよ…。魔族は使命を無くすと生きれないから…。」とリリは涙流し言った。
2人は暗い運命を恨んだ。