ヤス#51
「何を言うの、ヤス。私が命に替えても守ってやるわ…ヤス、おいで」
ヤスは、母に抱きしめられた。母の乳房が気持ちいい。
ヤスは意外にも落ち着いている。初めてでは無いのだ。去年の夏にサトリと会っている。その経験がヤスを強くしていた。それに、どうやらサトリは味方のようだ。あの、一見、不気味な爺さんが心強く感じた。
ヤスは純子の乳房で息ができなかった。
「お母さん…オッパイが苦しい」
「あ、ゴメン…ヤス。ヤスは落ち着いているのね」
「うん。大丈夫だよ。俺がお母さんを守ってやるよ」
「ふふっ、頼もしいわ、ヤス。でも、孤立しちゃったわね…誰にも言えないわ」
「うん、言わない方が良いと思うよ」
「ヤス、これからは、なるべく一緒に行動するのよ。昨夜みたいな事があると大変だから。学校が終わったら、真っ直ぐに帰って来てくれる?」
「うん、分かったよ。お母さんが心配だ」
「ヤス…自分の子がヤスで良かったわ」
ヤスは意味が良くわからなかったが、母が抱きしめてくれたので、そのまま甘えた。母の甘い匂いが鼻いっぱいに広がった。
ヤスは純子からあまり遠くに行かないように言われている。