『な、なんだよこれ…』
降り立つ先の戦場と化していた中庭は壮絶な光景が広がっていた。
転がる兵士達の骸はもちろんなのだが、仲間三人の姿が見当たらない。
辺りを見渡す。
『アイン!』
マナの声が遠くから響いた。
その声の方に駆け寄る。
マナがリオを抱え、座っていた。
『リオ!無事か!?』
閉じていた瞳が開き、リオを覗き込む。
『アインさ…ん?あはは…ドジっ…ちゃった…ぅ』
『リリーナとゴンザレスは!?』
どこを見渡してもやはり二人の姿だけは確認できない、最悪の事態が頭を過ぎったが…考えたくもない。
しかし、二人の名を聞いたとたん。
リオの瞳に涙が溢れた。
『竜眼の男が…現れて、ゴンザレスがあたしとリリーナを庇ってっ…殺された…』
『な…!?』
絶句。
殺された…という言葉が響いてくる。
『リリーナは!?』
『竜眼の男にさらわれた…。あたし…あたしっ…なにもできなかったっ…誰も守れなかった…!』
腕の中で泣き震えるリオをマナは抱きしめた。
『誰もあなたを責めたりしないわ、生きていてありがとう…』
『マナお姉ちゃんっ』
泣きじゃくるリオを更に強く、優しくマナは抱きしめた。
愛しい我が子を愛する母のように。
『行こう、リリーナを助けに…ゴンザレスの仇討ちに』
アインは立ち上がり、レグナを呼んだ。
『だからリオは待っててくれ』
不意にリオがアインの裾を掴む。
『だめ…あの男は危険過ぎるよ…いっちゃだめ。アインさんまで死んじゃったらあたしっ…』
『大丈夫だよ、だから心配しないで必ず生きて戻る』
微笑み、振り返った。既に舞い降りていたレグナへと駆ける。マナ!と横目で促す。
『ええ行きましょう!リリーナを奪い返しに』
地面から遠ざかり、風景はまた空の中へと変わっていった。
戦いは終わったはずだ、前から何度も耳にし、錆の町で出会った”竜眼の男”
『竜眼の男…!』
そのあざ名をもう一度アインは口にした。
しかし、青いはずの空は妙に赤かった。
世界滅亡まで12時間…