「うお。」
和真が驚きの声を上げるのも無理はない。
下校時刻前に教室に戻ってくればなんと由良が起きていたのだった。
「あら、もっとゆっくりしてくれば良かったのに。」
和真はここ最近、白木とよく話すようになり、今日も今まで話し込んでいたのだった。
「そ、それよりも、お前体の調子悪いのか?病院行くか?」
「なんで起きてただけで病気を疑われるのよ。」
由良がジト目で和真を見る。
「いやぁ、由良はもう四六時中寝てなきゃ由良じゃないっていうか。」
「あたしはそこまでものぐさか。」
「冗談だ、冗だ…なぁ由良。」
ふざけた顔付きから急に態度を変え、目の鋭さを平常に戻して和真は尋ねる。
「俺ふと思ったんだけどさ、お前のそれって過眠症とかってやつじゃ?」
「違うわよ。」
真面目に訊く和真に構わず、由良は即答する。
「別に不意に眠くなるんじゃないし、あたし寝起きはいいじゃない。これは好きでやってんの。」
早口で捲し立てる。
「…それもそうか、聞いてる症状とは確かに違うな。」
「そーゆーことよ、眠りだって浅い方だと思うし、全然合わないじゃない。」
由良は鞄の中からペットボトルを取り出して中身を呷る。
「…。」
「ん?まだなんかある?」
特に迷惑もしていなさそうな顔で由良が訊く。
「お前ってさ、夢とか見んの?」
「へ?」
「ほら、眠りが浅い時に夢を見る、とか言うじゃん。その割にお前、寝言とか言った覚えないし。」
和真の覚えでは、寝言所か身動きすらしたかも怪しい。
由良は少し考える素振りをした後、イヤな感じに笑って答えた。
「寝てるはずが、実は仮死状態だったりしてね。」
「こ、怖いこと言うなよ。」
和真は幾らか顔を険しくする。自分の見てる前で由良がそんな状況だったと想像するだけでも寒気がする。
「…にしても、今日は随分質問してくるわね、今まで訊いてこなかったくせに。」
「いや、白木と睡眠について語り合ってきたんでな、今日は。」
「何故かしら、あんた達の会話の選び方に興味が湧いてきたわ。」
呆れ顔で和真の凶悪な顔付きを眺める。
「まぁそれはともかく、どうする?下校時刻までまだ少しあるけど。」
「んー、帰ろっかなー。」
よし、と一言呟いて和真は帰り支度を始め、由良もそれに習う。
「ちなみに夢ね、見てると思うけど覚えてないや。」
由良らしいや、と和真は笑う。