鬼門?
暖かい日差しが射し込んでくる。つい最近まで寒さに苦しんでいたのが嘘のようだった。
「あったかくなってもうちは暇だね」
そんな独り言を呟きながら、喫茶店「デッドエンド」マスター、雨宮涼介はコーヒーカップを拭いていた。
「そんなことないですよ。元気だしてください!」
隣で美優が明るく言った。雨宮は美優に向かって微笑んだ。その時、入り口の呼び鈴がガラガラと音をたてた。
「マスター、お久しぶり」
「なんだ…君らか…」
入って来たのは幸司と天馬だった。
「客に向かってなんだとはなんだよ」
幸司がふてくされたように言った。
「大丈夫だよマスター、今日はお金あるから」
怪訝な顔をする雨宮にすかさず天馬が財布をちらつかせて言った。
「仕方ないね…注文は?」
「そーいえば二人とも死にかけたんだよね」
コーヒーを飲む二人に雨宮は聞いた。
「そうだね…幸司は意識不明になるし、俺は出雲まで飛ぶことになるし…まぁ、美優ちゃんのおかげでどうにかなったけど…」
天馬が美優の方を向いて微笑む。隣にいる美優が赤くなる。幸司も黙り込んでしまった。
「ふーん…まぁ大変だったね」
雨宮が軽く流す。
「まぁ、減棒期間も終わったし、これからガンガン働いていかないと」
コーヒーを飲み干した幸司が笑いながら言った。
「二人とも、これからの予定は?」
「ん、蔵王丸さんに呼ばれててね。1時までに本部にいかないと」
天馬が時計を見ながら答える。時刻は12時を少しまわっていた。
「んじゃ、そろそろいくかなー」
幸司が立ち上がり軽く伸びをした。
「マスター、お会計ここ置いとくね」
「まいど」
雨宮が確認する。美優も笑顔で二人を見送った。
「いってらっしゃーい」
「おう、また来るよ!」
そう言って二人は「デッドエンド」を後にした。