とりあえずコーヒーに口をつけた。
隣を見ると、高木はパスタにガッツいていた。
それを見て俺は落ち着きを取り戻した。
「証明写真が関係してるってどう言う事かな？」
「詳しくは分からないけど、兄ちゃんは言ってた。『裕貴…あの噂は本当かも。写真撮れたよ。』って」
「君は写真見たの？」
裕貴は無言で首を振った。でも、これだけでは何も確証がない。
ただ、調べていた男が写真を撮った後に事故で亡くなった事実があるだけ。
「裕貴君。他に何か知らないかな？」
「遠野さんも信じて無いんだね。」
裕貴は睨みながら答えた。【遠野さんも…】って事は他にも話したに違いない。そして、誰も信じ無かった。
「そんな事ないよ。信じてるから調べてるんだよ。ただ、情報が少ないから少しでもって思ってね」
すると、今まで食い続けていた高木が口を開いた。
「裕貴。遠野さんは証明写真の事を本気で調べてるんだ。知ってる事を全部教えてくれないか？」
裕貴は下を向いたまま、唇を噛んでいた。
無言の時間が過ぎる。
…
…
「コーヒーのおかわりはいかがですか？」
「あっ。お願いします。」
ウェイトレスの声で、重苦しい沈黙が少し和らいだ。
「裕貴君…無理にとは言わないよ。嫌な事思い出させてごめんな。」
「うん。一つだけ約束してくれる？」
「約束って？」
「僕、兄ちゃんに何が起きたか全部知りたい。分かったら教えてくれますか？」
裕貴は強い目線で俺の目を見てきた。彼も彼なり兄の死を受け止めてはいても、納得できないんだろう。
「いいよ。分かったら全部話すよ。」
俺がそう言うと、裕貴は突然立ち上がった。
「じゃあ、ここで待ってて下さい。すぐ戻ってきますから」
そう言うと店から走りさっていった。
どこに行ったのだろう？
「なぁ…どう思う？」
少しの沈黙の後、水を飲み高木が口を開いた。
「俺は都市伝説とかあんまり信じて無いんで…なんとも言えないっすけど。ただ…」
遠い目で高木は空を見ていた。
「ただ、あいつの事故って俺も信じられない所があって」
「そう言えば、事故ってだけしか聞いて無かったな。」
考えてみたら、都市伝説絡みで死んだとしか聞いて無かった。
事故死は一日に何件もある。偶然の可能性の方が高い。
「言って無かったですか？」
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