過ぎゆく時の中で〜vol,7

真希  2007-05-19投稿
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落ち着いた声量で、ゆっくりと言葉を噛み締める様に続けた。
「運命の導きは…神のみぞ知る。お金の力では変えられないもの」

婦人の夫は、地域も名誉も全てを手に入れ、まさに順風満帆と言える人生だった。アグレッシブな事業展開で成功を納め、いつしか年商30億を下らないだろうと言われる資産家へと登りつめていた。

信じていた…金という鎧を武装する事により、みなぎる力を注がれる愛情を。

しかし、そんな持論も定説も蝕む病魔には脆くも音をたてて崩れていった。手の施しようがなく、担当医も余命3ヶ月を告げたという。
その瞬間人生全てを掛けて作り生み出した札束は、紙切れへと変わっていった…。例え最新医療を駆使しても、宗教に大金を注いでも運命を変える事は出来なかった。

次第に弱っていく体、崩れてゆく名誉。
誰も信じる事など出来なくなり、猜疑心だけが自分を苦しめた。婦人は何もしてやれない自分を責めた。
いくつもの神に祈りを捧げても所詮、金精算。何の頼りにもならなかった。

いつしか疲れていたのだ。
不眠症から安定剤を服用する機会も次第に増えていった。

「あなたを1人にはしない…私も…一緒にゆくわ。」永遠に結ばれる愛を選んだ。婦人の決心に迷いはなかったと言う…。vol,8に続く



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