ナイト・オン・ドラグーン【103】話『回想、18年前の過去』

みるく  2007-05-20投稿
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幾年もの間、意識は遠い闇にあった。

感じることもできず、見ることもできない。

視覚、聴覚、嗅覚、感覚、味覚。

全ての機能を突然失ってから18年の月日が流れた。

ただ生きているだけの意識。

永いこと闇の中にいると自分の名ですら忘れてしまうような気がした。

失ってはならない記憶さえも。

あと少しだけこの苦痛に堪えられるのなら、まだ自我を保っていられる。

18年前、人間の友との交わした誓いを無駄にしないためにも。


封印されし”朱き竜”は、ただその時を待った。




『18年前』







大陸全土を巻き込む戦争が勃発した。

『神』を名乗るわずか、5歳の女の子によって。

憎悪の連鎖は日に日に増し。

人々は窮地に追い込まれた。

目的は”女神”の破壊。世界を維持し封印するそのもの破壊だった。

彼女は不死の軍団を引き連れ、女神の在りかを捜索した。

刃向かう者は殺し、従わない者は容赦なくなぶった。
その頃、不死の軍勢に対立する連合軍が女神を守護すべく戦いの狼煙を挙げた。

その連合の中に一人の少年がいた。

名は『レオン』彼もまた不死の軍勢の侵略による犠牲者だった。

そして、レオンは女神の塔にて捕縛された朱き竜と出会う。


『おい…力を貸せ』

少年は捕縛されている竜を見るなり協力をせがむ。
しかし、竜は答えない。

『死にそうなんだ…こんなところで死にたくねぇ…だから力を貸せ』

竜は血にまみれた少年を見据えた。

鎧などを纏っていたであろうその姿は今や全身傷だらけで微塵もない。
それに腹からおびただしい血が広がっていた。

『我も死にかけだ…人間』

沈黙の末、竜は言葉を返す。
捕縛されてから何年も経っていた。
衰弱からか、空を羽ばたくための翼は力なく倒れている。

『みんな、殺された…親父もおふくろもっ…まだ小さかった妹でさえも…みんな、みんなあいつらに!』

『復讐のためか…?人間』


『ぁあ…復讐するんだ、あいつらを皆殺しにしてやるんだ』


『ならば、我と”契約”するがいい。死にかけどうし、他に手もあるまい』


そして、竜と少年は契約をする。



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