「この国…いやこの世界ではあの"カフラー事件"で能力者の保護、隔離が徹底されました。
ですが、実際行われているのは軍事転用を目的とした能力者の生体実験。
アナタはそれを知って反政府グループを立ち上げたんじゃないですか?
…そう、政府からイルくんを守るために、違いますか?」
父さんは僕の前で膝から崩れ落ちた。
「私達にイルくんを預けて見ませんか?
私達だったら能力の使い方や能力の制御を教えることができまー」
「いい加減になさい!!」
僕の後ろから大声を放ったのは母さんだった。
「イルは私達の子です。政府、ましてあなたみたいな得体の知れない人達には絶対に渡しません!!」
母さんは男に詰め寄った。こんなに感情的になる母さんを僕は今まで見たことがなかった。
そして母さんの瞳は闇が消えて、怒りに満ち溢れた、とても人間らしいものだった。
「イリーナ様…もう何を言っても無理そうですね。
しょうがない、アナタは生きて連れ帰る予定でしたが、予定変更です。
ダンナさんと一緒に…死んでください。」