子供の手からボールがすべりおち、車道へと転がっていく。
子供はそれを追い掛ける。
クラクションの音にミサキさんの悲鳴。
そしてブレーキの音と何かがぶつかる音。
宙を飛ぶボール。
そのとき僕はボールが花柄だったことに気付いた。
僕は何もしなかった。ただの傍観者だ。
僕は部屋を出た。年季の入った扉が音をたてて閉まった。
子供は死にはしなかったが、重傷らしい。
そして僕らは現場の状況など、警察から事情聴取をされた。ミサキさんは気分が悪いということで、僕だけが受けた。
部屋の外は少し薄暗く、肌寒かった。それにいつのまにか雨が降っていたらしく、雨の音がした。
僕はミサキさんの名前を呼んであることに気付いた。
ミサキさんがいない。
椅子に座っていたはずなのにいない。
椅子にさわってみると、椅子はひんやりとしていた。
いつから・・・?と僕は思考を巡らした。
ミサキさんは警察署の外にいた。