ナイト・オン・ドラグーン【105】話『解かれる封印』

みるく  2007-05-22投稿
閲覧数[181] 良い投票[0] 悪い投票[0]

聖地、女神の塔。
神々しい造りだったその塔は永年の腐朽により廃化していた。

塔の内部へと誘う、かつ巨大な扉。

その扉の前に少女を担いだ竜眼の男が立っていた。

竜眼の男が扉に手を掛けた。

バチッと光が爆発し、手を引っ込めた。

やはり、と竜眼の男は焼けた手の平を見つめる。


『ん…』

担がれていたリリーナが目を覚ます。

そして状況に気付く。

すぐ傍にあるのは竜眼の男…

『竜眼のっ…!?』

リリーナはもがくが、しっかり押さえられているため足が宙を泳ぐだけだった。
『くっ…!貴様ぁ!離せっ!!』

一喝するが、男は少しも動じない。

その視線は開かぬ扉を見つめている。

『あっ…貴様!どこを触って!?』
男が不意にリリーナを降ろす。

赤子を抱き上げ、降ろすように。


即座に離れ、距離を取って警戒するリリーナに男は扉の方へと指射す。


『…なんなんだ…?扉がどうした?』

不可解な表情を浮かべるリリーナを尻目に男は突然、大剣で扉を叩いた。

金属音が響く、同時に光が炸裂し、鋼で出来ていたはずの剣の先端が折れ、飛ぶ。

『これは…結界…しかも、かなり協力な』

そして男はリリーナを見据える。


『僕にこの結界を解けっていうのか?』

男は無言でうなづく。


(この男…だから僕をここまで連れて来たのか…)
リリーナの中で一つの疑問が消えた。


『確かに、魔導に通じる者ならたやすく解ける結界だ。この僕でもな…』

男は無言でこちらを見つめてくる。

だが、とリリーナは構える。

杖はないが魔法で闘える。
『目的を言え!この扉の先になにがある?』

構え、こちらを伺うリリーナに男は懐から黄の小さな球を取り出し見せた。

『そ、それは…ゴンザレスの核!!』

ゴンザレスは自分を庇い立てこの男に惨殺されたが、魔力によって意思を持つゴーレムに過ぎない。核を中心に体を造り直せばゴンザレスは何度でも蘇る。
しかし、核とは言わば魂のような物。
壊れてしまったらゴンザレスという人格は二度と蘇らない…

『取引か…くそっ…』


リリーナは扉へと歩み寄る。

そして、呪文を唱え出した。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 みるく 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ