ラララ…
波が穏やかな海の上、暗闇の中に光る月を見上げながら今日も悲しげに歌を歌っている人魚がいる。
その人魚の名はアルゼ。今日も暗い夜の海で岩に座り月を見上げながら綺麗な歌声を静かに響かせていた。
アルゼの表情はいつもどこか悲しげだ。こんな広い海で人間に見つからないように人魚たちはひそかに生き続けている。
昼間は光りの当たらない海の底で過ごし、夜は光りのない暗い海の小さな岩の上でこうして好きな歌を歌うのが唯一のアルゼにとっての楽しみであった…。
人魚はとても綺麗なイメージだと人間たちは抱いているかもしれないが決してそうではない。いつも人間たちに怯え暗い海を泳いでいるのだ。魚たちや海の生物たちは見向きもしてくれない。所詮半分は人間の容姿の人魚なのだから…。
人魚たちはいつかは人間になるか魚になれるのを夢見ていた。もっぱら人魚は人魚でしかいられないのに…。
でもアルゼは他の人魚たちとは違っていた。魚になりたいなんて望んだこともなければ人間になりたいと願ったこともなかった。アルゼの願いは白い翼で自由に高い空を跳ぶことだった。
「私も青い空を飛んでみたい…暗い海は冷たくて悲し過ぎる…鳥たちがうらやましいわ」
アルゼはそうつぶやき、綺麗にアルゼを照らし続けている月を見上げた。
その頃…
月に腰掛けて一人の天使がアルゼを見ていた。
「なんて綺麗なんだろ…」
天使の名前はラエロ。ラエロは人魚のアルゼを毎日空の上から眺めていた。
この物語は一人の人魚と一人の天使が出会ったお話である…