航宙機動部隊第二章・33

まっかつ  2007-05-22投稿
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『ふうん、君達も臆病この上ないんだね。たかが辺境の一星系の陳情毎きにそこまでビビル何てな』
《ギャラクシーキャスティング&ブロードバンド》派遣支局統括ディレクター・A=キネは辣腕でなる男だ。
例え芸能人相手でも面と向かってこんな事を言われたら、きっとただでは置かなかっただろう。
増してや、その主が彼からしたらそれこそ十代の若僧だとしたら、恐らくは口より先に飛んだ灰皿が彼の武勇伝ないし暴君録の分量を少しばかり加算したかもしれない。
だが、
『まあ、馬鹿な星民煽ってカネ巻き上げる位しか取り柄無いんだからさあ、君達は。このごに及んで偽善者ぶったって似合わないんだよ。羊の皮を被っても狼は狼。僕には分かるんだよ。皮の下から漂う下賎な臭気がね?』
『や、これはこれは…痛い所を突かれましたなあ』
合衆国軍旗艦《D=カーネギー》内に設けられた同社オフィスの貴賓応接室のややくどい仕様のソファーの上で、彼はさも間抜けそうに、指先で頭をぽりぽりやりながらそうお茶を濁すのみだった。
複数の理由によって、ディレクターは当然煮えたぎりっ放しの腹中を暴発させる事が出来なかった。
マホガニー製の無機能テーブルを挟んで、実に尊大そうに脚を組んで座っている客人こそが、その理由の最たる物だった。
『しかし、エンジェルミ公子。例え優れた題材が有りましても、我々としては業界のしきたりもございますれば、現地の意向も尊重しなければならない、と言うのが制約として有りましてな…それがどれだけ足枷に感じても、ただ邪魔だと言うだけで振り払う訳にも参りません次第でして』
『あっひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃ』
銀スプーンでホット紅茶を掻き回しながら、追従がてらに弁解する相手に、太子党の総師はバカにし切った哄笑を浴びせた。
『だから常識何か守るお前等なのかよ?詰まり、フライングした所をライバル共にリンチやパージされるのが恐いだけなんだろ?後は、あれか?地元のチンケなネッツの反発か?はっ、カネで解決出来る話だろ?今まで散々M&Aして来たのはどちらさんでしたっけ?』
それを駆使する嗜好や信条が大半の人からすれば恐ろしく異常で醜悪なだけで、フーバー=エンジェルミの知的水準は決して低くは無い。
自分に関連深い分野については玄人顔負けの蘊蓄を披露する事も少なからずあった。



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