水嶋君が去って行く…。
止める勇気もなくて、私はただ、彼の後ろ姿を目で追うしかなかった。
「何やってんねん〜」
翌日、さっそく阿部やんに報告したら、呆れられてしまった。
「だって…イタッ!」
板チョコを投げ付けられる…。食物を粗末にしたらダメだってお祖母ちゃんに教わらなかったんだろうか…。
「だってはいらん!イライラすんなぁ〜」
水城は殻だけでかくてホンマ小心者やねんから…と付け足す。
「ごめん…」
「って、何謝ってんねん」
「…」
はぁ〜っとため息を付いてお手上げと言ったようなポーズをとる阿部やん。
「まぁ、ええわ。しゃーない、うちがあんたとあの、木登り少年の為に人肌脱いだるか!」
ずずぃと顔を近付けて、
「ええか、このチャンス逃したらアカンで」
って…板チョコ食べながら目をギラギラさせられてもなぁ…。
「う、うん…」
私は力なく返事した。
その日の放課後、部室へ向かう途中の廊下で、水嶋君に引き止められた。
「これ、さっき阿部さんから貰ったんだけど…」
見るとゲームセンターの無料チケット。しかも有効期限が今週日曜日までになっている。
まさか…阿部やん、これの事言ってたのか?(汗)