平成16年 7月
梅雨の明けた間もないころ
日差しや暑さは「あの頃」と変わらずに照りつける。
戻ることが出来るのなら戻りたい。
『ゆりかご』
平成13年 7月 新潟県籠乃(かごの)
「仙台から来ました、松田優太です。」
今日から家の都合で、この田舎で暮らす事になった俺は
転校生として「籠乃高校」に転向してきた。
この学校は全校生徒22名、渡り廊下の向こうは中等部、小等部と
つながっているのだ。高中小、合計でこの人数なのだ。
「それじゃあ皆、仲良くしてあげてくださいね。」
先生がそういうと皆は笑って迎えてくれた。
「私、佐藤このみって言うんだ。よろしくね。」
「蔵沢皐月!よろしくね!」
「うん、よろしくお願いします。」
挨拶が終わると街から来たのが珍しいのか質問の連続だった。
だが1ヶ月も過ぎると、すっかりとの土地、仲間達にも馴染んでしまった。
今は中等部の「武藤加奈」と小等部の「吉岡ミホ」も加わり
みんなで仲良くやっている。ちなみに男子は小等部にしかいない。
「今日の授業はここまでです。期末考査も近いので計画的に過ごしましょうね。」
「こないだ中間やったばかりだよぉー、いやだー。」
「また先生に点数オマケしてー、って頼むの〜?このみ?」
「さっちゃんは勉強できていいなぁ〜。」
「このみはいつも窓の外ばっかり見てるからだよ。」
「だってさ、あのカラスの親子がすっごい可愛いんだよ〜?」
「カラスが好きだなんて変わってるよね〜、このみは。」
「そうだ皐月、今日はお前ん家のリフォームだろ?手伝わなくていいの?」
「いっけない!忘れてた!じゃあね、また明日!」
「私たちも帰ろっか。」
四方2キロ地帯は田んぼと家だけの田舎だが、前に住んでいた所より
ずっと楽しくて落ち着く。ずっとここに居たいと思った。