遠くで目が合う。すぐに逸らしたけど、遅かった。
「あ〜!見た事あると思ったら、やっぱり」
「ナニナニ?」
先輩の隣にいたキャップ帽の男がキョロキョロしている。
「ホラ、前に言っただろ。昔、告って来た男女」
オトコオンナ…。
その一言で胸が締め付けられる。
「あ〜あれか、確かにな!」
先輩が髪を掻き上げて言い放った。
「ったく、キモイんだよ。中途半端が身分弁えて欲しいよな〜。ハハッ!」
うーわ、ひでぇ〜かわいそなどと言いながらキャップ帽の男の笑い声が聞こえた、次の瞬間…
バキッ!!
鈍い音が響いた。
先輩が倒れてる。
その前に立ちはだかっていたのは、形相を変えた水嶋君だった。
「謝れよ…」
座り込んでいる先輩の胸ぐらを掴んで睨み付けている。頬を腫らした先輩。
「何だよ、お前…」
「彼女に謝れ!」
先輩の言葉を遮るかのようにかみつく。
「お前こそ、初対面で何してくれてんの?」
先輩が胸ぐらを掴んでいた手を思い切り振りほどく。その弾みで水嶋君は倒れ込むように転けた。
その上、先輩の足が水嶋君の頭を踏み付ける。
(やめて!)
「水嶋君!!」
痛みに歪んで行く彼の顔。
「謝れば許してやるけど?」