ミサキさんは冷たい雨の中、独りで立ち尽くしていた。
「ミサキさん・・・」
声をかけても反応はない。
「ミサキさん。風邪ひきますよ」
さっきより大きな声で話し掛けると、ようやく彼女はふりむいた。
でも、その瞳には何も映っていなかった。
虚な瞳で彼女は僕をじっと見つめ、唐突に声をもらした。
「あたしは人殺しなんだ」
雨で顔が濡れていたのに、彼女は泣いていたのだとわかった。
「さっき、あの子のお母さんが・・・人殺しって・・・あたしは・・・」
「もういいです」
彼女の声を僕はさえぎる。
「っひぐ、、っっ」
小さく鳴咽をもらしはじめた彼女は、とてもか弱く見えて、今にも消えてしまいそうだった。
いつもの眩しい笑顔がまた見たくて、消えないでほしくて、
僕は彼女を抱きしめた。
ミサキさんの体が一瞬強張った。僕はさらに強く胸に彼女をおしつけた。
ミサキさんの体は、ぞっとするほど冷たかった。いつから外にいたのだろうか。
「リクっ・・・うっ、うわああぁ、、、」
雨の中彼女の声だけが響いていた。