園芸部と言う半帰宅部状態の部は夏休みだけ毎日のように、温室と呼ぶには小さい個室の水やり、伸び切った雑草の草刈りなどと活動する部だった
3年が引退してから、私と桜祐介、二人だけが部員となり、来年には廃部するだろうと思われていた
「千葉先生ー」「水野さん!やっと来たー。」
温室でじょうろを持ち笑うこの男は、千葉先生と言って20代の短髪で黒髪の理科教師だ
「桜は?」「来てないね」「…手伝います」「はい、どうぞ」
水が涼しげにじょうろからさわさわと鳴いていた。だけどちっとも暑さは変わらない
「何飲んでるんですか」「桃水。冷たいよー」「ずるい」「じゃあ、あげよう」「わ、いいの?」
先生は「特別」と言うと、
じょうろを持つ私の手を掴んで軽くキスを落とした。甘い匂いがして、唇はひんやり冷たかった
私が不利な園芸部に入っている理由はひとつだけだ。千葉先生と会うため。