『こりゃ何だ!?』
銃声の元へと到着した勇はその光景に絶句した。
その光景は今まで散々死体を見てきた勇までもが目を疑う様な光景だった。
目の前には頭の無い男の死体と、頭と左足が無い男の死体。
そして彼等の周りには血痕と頭のものと思われる肉片。
そして死体に折り重なる様に高校生と思われる制服を着た少女が倒れていた。
『こいつら…どんな殺され方をしたんだ…それにこの娘は一体…』
勇は少女の体を揺さぶり声をかけるが反応は無くピクリとも動かない。そしてこの時勇は少女の両腕が血塗れになっている事に気が付いた。
不審に思いながらも勇は少女の脈と呼吸を確認しようと仰向けにさせた。
そして勇は少女の顔を見て、またもや絶句した。
彼女の口元は血で真っ赤に汚れている。
『まさか…こいつ飲んだのか!?この二人を殺して。しかもこの顔…アイツそっくりだ。』
勇の脳裏に5年前のあの光景がフラッシュバックする。
緑色の瞳を輝かせて、何の躊躇も無く人を殺すあの少女を。
勇は脈と呼吸を確認したが異常は無い。
『こいつは何なんだ…?
人間でもオニでも半鬼でも鬼人でも摩羅でもないこの甘い香…
取り敢えず敵なのか、そうで無いのかはわからないな。』
勇が少女を抱き上げて教会へと連れて帰ろうとした。その時、少女の芳香をかき消す生肉の匂いを勇は感じた。
『来たか…』
勇は少女を道路脇のアーケード付きの雪の無い歩道へそっと寝かせた。
短刀を鞘から取り出し、オニの左手の骨をボキボキ鳴らす。
勇の瞳がオニの紅へと染まった。