君を捨てた筈の閣下の部下が僕の屋敷を訪ねてきた時―――今更何の用だ、と、怒鳴りたかった。
いくら彼女を傷つければ気が済むのだ、と。
……カーキ色の軍服を着た男たちの都合のいい話を聞いている時だった。
彼女が、とても不安そうな目で僕を見た。
今思えばあれは同情だったのかもしれない。
僕から離れていくことを罪に感じたのかもしれない。あんな繊細なガラスのような瞳は忘れられそうにない……僕は、
(君にそんな目をさせたくなかった。)
「君はどうしたい?」
僕は彼女に尋ねた。
一度は君を捨てた奴らのもとでもう一度いのちを犠牲にするのか
それともここに残るのか。「………」
彼女は黙っていた。迷いがあるように見えた。
―――そして、僕が最も恐れていたことを口にした。