一通りの取材を終えて、僕達は店を出た。
「なぁ。実際に話を聞いてどう思った?」
「ん…どうなんですかね?でも、あいつが死んだのは、事実ですよ。」
高木はそう言ってタバコに火をつけた。
「先輩。今日はもう遅いんで帰りますね。」
「そうだな。今日はありがとう。今度、飯でも……嫌なんでもない。」
高木に飯を奢ったらいくらになるか分からない。僕は言葉を飲み込んだ。
「先輩。なんか分かったら教えてくださいね。俺も少し調べてみますよ。」
「あぁ。じゃあ、またな。」
とりあえず予想外の一日が終わった。
でも、これが高木と会う最後の日になるなんて、その時は考えて無かった。
【さて、家に帰るか。】
僕は駅に向かって歩いた。いくら考えても、今日の事は信じられる事では無い。
でも、現実に【何か】は起こっている。
電車に乗り、駅に着くまでの間、また日記を読み返す事にした。
いくら読み返しても、肝心の所で終わってしまう。もし…きちんと書いていてくれたら。
【ガタンゴトン。】
電車の揺れで眠くなる。その時だった。
【ドン!】
誰かがぶつかった。
「すいません。」
見ると小学生が立ち上がって頭を下げている。
「いいよ。ケガしなかった?」
「はい。でも…ノートが」
【ノート?】
自分の膝のあたりを見ると、ノートと膝あたりに土が積もっている。
なんで、土が?
「すいません。カブトムシの籠がひっくり返えって」
「カブトムシは大丈夫?」
「少し土に埋もれたけど、大丈夫です。」
俺も人がいいって言うか、まわりが気になって怒る気にもなれなかった。
駅に着き、ノートについた土をゴミ箱に捨てた。
【預かり物なのに。ハァ…】
ノートについた土を払う。白いノートが茶色くなってしまった。
「あれ?何か書いてある。」
土がノートの溝に入り、うっすらとだが、字が浮き出ている。
多分、上に書いた字が跡に残りそれが現われたのだろう。
【あれ?前のページとなんか違うぞ。】
ノートに浮き出て字が薄く読みにくい。
鉛筆で薄く上から塗ると少しだが読みやすくなった。
【この現象は…の偶然と…進化と普及によって起こされた。誰かに知らせないと危険だ。その為には、証拠が……自分…】
これ以上は読み取れない。やはり何かを掴んでいたみたいだ。