高校生としての最後となる試合を弓斗〔ユミト〕は挑もうとしていた。
弓斗は高校生から初めてテニスを始めて今まで頑張っていたが、いつも補欠だったが、最後の試合には出してもらった。
弓斗は球足も速くなく、正確なコントロールを持っている訳ではなかった。
ロブ以外は。
弓斗のロブはチームでもトップだった。だがそれだけで試合に勝てる訳が無い。
最初で最後の試合は1ー3で圧されてていた。
弓斗は不向きなシングルスでの試合だったが、ドロップショットで前におびき出し必殺ロブで点を取っていた。
しかし同じことばかりで読まれ始め、試合は圧倒的になりつつあった。
ついに5ゲームまでも取られてしまい後がなくなった。
相手のサーブ。鋭く叩き込まれた球ははじけるように地面に跳ね返り弓斗の顔をかすめた。
15ー0
そしてまた同じように鋭いサーブだったが弓斗はラケットに上手く当てストレートに返した。
しかし球は弱く相手は速く回りこみクロスに打った。
30ー0
相手のサーブにも慣れ、ドロップショットを狙った。ポンと押す様に打った。
ボールはネットのてっぺんの白い帯に当たり、少し浮き落ちた。
40ー0
運がない。自分のコートに落ちてきた。
相手のマッチポイント。絶望的。
しかし、弓斗は一矢報いようと必死だった。サーブを打ち返し、激しいラリーが続いた。
弓斗も驚いていた。こんなラリーが出来るとは思っていなかった。そして嬉しかった。
弓斗は打ち損じ、相手コートのネット前にボールが落ちた。相手は必死にボールを拾う。
相手が返したボールは弓斗のラケットに捕らえられていた。相手がボレーをしようと構える。
ロブを打つには難しい距離だった。しかし弓斗はロブに賭けた。
ボールが華麗なアーチを描き出し、相手の真後ろに落ちた。
ゲームセット!
アウトだ。アウトだが弓斗は自分に自信を持てた笑顔をしていた。
弓斗は高校までで止めようとしていたテニスを一生の友にしようと決めた。