「あぁぁぁああっ!! もうダメだぁぁあっ!!死んだぁぁあっ!!」
後ろから聞こえる奇声かつ悲鳴に少しびくついてしまったのは二年J組の清水和樹。
そうこの物語の主人公ともいうべき存在だが、性格はハッキリどころか少しかすれぎみであるいたって普通の高校生。
「なんだよ!うっせーなー!」
とやかましい声のする方に罵声をあびせると、そこには嘆き悲しんでいる内藤がいた。
身長は僕より高く、なおかつスタイルもいい。クラスの太陽的存在。今の時点では、その破片すらもうかがえないが…
奴の嘆いている理由、それはたった今、冷酷とも呼べる学校のチャイムと同時に回収された数学の答案用紙。
「お前、ちゃんと勉強してきたんだろ?」
半分笑いながら問いただしてみる。奴の顔は真剣そのものだ。
「俺がきちんと机に向かって数学のテキストを開くわけがないだろ…」
全くの自業自得である。
「……知るかよ、んなこと……」
自分の声があからさまに呆れ返っている。
「んなに騒ぐな。ほら、次は化学だろ?ちゃんと最終確認しといたほうがいいと思うんだが」
渋々と自席に戻る寂しい背中は、なんだか押し潰された肉まんに似ている。
自分も奴の様にはなりたくなかった。当然である。
…50分後…
「だぁぁぁああ!!!わかんねぇよ!!なんだよあの電離分解っ!!」
はっと気付くと、そこにはとてつもなく大きな声を張り上げる自分がいた。
ムカつくことに後方から笑いを必死に堪えている内藤の姿が見える。
弁当を突きながら内藤とテストの作製者である先生の文句を互いにぶつけ合っていた。
食が喉を通らないが、今日から部活が再開されるのでカロリーの摂取は怠れない。
するとバックの中からバイブのあの鈍い音。
もとはといえば我が高校では持ち込み禁止の便利グッズ、携帯電話を先生がいない事と共に確認してみる。
すると携帯の中央が青い点滅を続けているのが見て取れた。
急に気持ちが楽になり、直ぐさま携帯を開いて受信フォルダを確認する。
もちろんお相手は宮本琴美その人。僕らは既に共通点を持っていた。
それは音楽を聞く事ほかならない。