あたしにはアレルギーが、ある。
ダニとかホコリとかだったらまだいいかもしれない。薬さえ飲めばおさまるんだから。あたしのアレルギーには薬なんて効かない。
あたしのアレルギーはある「言葉」によって起こる。
その言葉とは…
「愛してる」
ィャ、ほんとに…
それが発病?したのはあたしが高校に入学してすぐのこと。当時あたしには彼氏がいた。委員会で一緒になった2つ上の先輩と妙に気が合い、仲良くなって、付き合い始めた。
先輩は特別かっこよくもなぃし、見た目には一見どこにでもいるお兄さん。毎日部活で汗を流すスポーツマンだった。
毎日先輩は遠回りしてあたしの家まで送ってくれていた。
そんなある日のこと…
「俺のこと好き??」
帰り道の海沿いの道。田舎だけに人が少ないし、近くに民家もなく、静かな道だった。
夕暮れの海を見ながら歩いていると先輩がいきなり聞いてきた。
「もちろん。」
「ちゃんと言って?」
「は、恥ずかしいょ」
「言ってくれるまで離さないっ」
先輩はそう言うとあたしに抱き付いてきた。
言っておくがいくら人が少ない道でも通る時は人は通るのだ。
外だし誰かに見られたら猛烈に恥ずかしい。
「も〜…」
あたしは離して欲しい一心で先輩に言った。
「すき…」
先輩が嬉しそうに顔を近付けてきた。と思ったらキスされた。
この瞬間あたしの背筋、首、腕に鳥肌がたった。
今考えればこれは恐怖を知らせる警報だったのかもしれない。
「愛してるよ…」
先輩があたしの耳元で囁いた。
その瞬間…
あたしの耳元でザッ…という音が聞こえた。あたしの血の気が引く音だった。
(いっ…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
あたしは心の中で叫んだ。
口に出なかったのが奇跡だった。
ただ、実際叫ば(べ)なかったことで、あたしの体に異変が起きた。まずこれまでとは比べ物にならない鳥肌。もう鳥よりサメって感じ。
顔は顔面蒼白で呼吸が苦しい。
目にはうっすら涙が浮かんでいた。そしてあたしは心の中でまたもや叫んだ。
(嘘だっっっ!!)
何が嘘なのか分からなかったけど、心の底からそう思った。
足がガクガク震えて冷や汗ダクダク。
その日それから家までの記憶はない。
ふと我に帰ると、部屋の中でタンスに向かって正座をしていた。
すぐに携帯を手に取り、先輩にメール。
『あたいとわかれてくださいまし』
また「愛してる」って言われたらああなるのかなぁ…