ナイト・オン・ドラグーン【108】話『朱き鎖』

みるく  2007-05-27投稿
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(すまない…”アデル”永いこと待たせて…)

レオンは”アデル”と言った朱き竜に触れようとした。


『おい!お前っ!その竜から離れろ!!』

リリーナが叫び、レオンは黙って振り返る。

朱き竜からまがまがしいものが感じとれたのだ。



レオンは向き直り、アデルを見た。

朱く鱗に覆われたその姿は18年前と何一つ代わらない…

その背に乗り、空を翔けたあの時も…

羽ばたく翼の力強さも。

共に戦い、同じ痛みを分かち合い…自分に代わって犠牲になってくれた友を。


『さぁ、アデル…共に行こう。俺とお前の旅は始まったばかりだ』


そして、レオンは再度アデルに触れようとする。

だが…

『貴様……。何奴?』

アデルが低く唸る。
レオンの横顔に驚愕が走るのをリリーナは見た。

『人間…我ヲ欺イタ…我ヲ…我ヲ!殺ス!殺ス!殺ス!!!』

朱き竜が吠えた。

レオンは動こうとしない。

『おい!』

リリーナがレオンの腕を引っつかむ。
『逃げるぞ!この竜は暴走してる!早くっ!!』

『許サヌ…人間殺ス!!』
アデルが炎を吐き出す。

次の瞬間、リリーナは突き飛ばされ地面を転がった。

体を起こすと傍らでレオンが同じように起き上がったとこだった。

『お前…ぼくを庇ってくれたのか?』

不意にアデルが翼を広げた。

咆哮を一つ上げ、天空に炎を吐き出す。


それが火柱となってあがる。

突風が舞い、アデルは空中へと羽ばたく。


レオンが追い掛けるように手を差し延べたが、無論届かない。



『滅ビヨ…焼き尽くしてくれるわ…』

憎悪の塊がいっきに膨らんだ火炎を吐き出した。

朱き竜”アデル”憎しみの暴走が始まったのである。







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