目が覚めると、ツキとサンは草原に寝そべっていた。
「俺たち…どうしてこんなところに?」
「第8剣聖部隊が裏切った。たぶんここは“ハンゼルガ”の領地だ。」
サンの右腕にはまだ新しい、深い切り傷が残っていた。
「第8…レナルドの隊か…あのハゲ!。それよりサン、傷大丈夫か?」
サンは右腕の上部をスカーフで締め付け、止血した。
「ちょっと血を流しすぎた…休ませてくれ。」
そう言うとサンは目を瞑り、再び横になった。
サンが目覚めたのは夕方だった。ツキの姿が見あたらない。
辺りを探し回ったサンは、二人が寝ていた場所から二百歩ほど歩いた泉でツキを見つけた。
「何してる?」
「やっぱりここはハンゼルガだ。水が完全に汚染されてる…この前の戦争のせいだ…」
戦争とは、ハンゼルガと、隣国メチカの資源を巡る争いである。メチカの新型細菌兵器“スコル”によりハンゼルガはわずか三日で滅びた。噂では、スコルに感染した人間はたちまち感情のない廃人になるらしい。
幸い空気感染はしないが、狭いハンゼルガには十分な効果だった。
ツキは、ハンゼルガの旧都の方角に向け歩きだした。