混乱から正気に戻った時、さつきは規則正しい寝息をかいていることに気がついた。規則正しいということは、脳が睡眠に入ってしばらく経っている、ということだ。
その時はさつきを叩き起こし、家族の目に写らないように若干冷汗をかきながらさつきの家まで送り届けた。しかし、いきなり道端で抱きつきながら眠り始め、仕方なくおんぶで送るときは大変だった。家は裏なのだが、さつきの寝相が悪いためか、10分近くかかってしまった。さつきの両親はさつきを担いだ俺を見るやいなや、目を丸くし、呆れ半分、申し訳なさそうに頭を垂らしたりしていた。その時、笑いを堪えているようにも取れた。
思い出にふけっていると、周りのおばちゃんや小、中学生が気味悪そうにこっちを見ているのに気がついた。いつのまにか、苦笑交じりに声を漏らしていたらしい。
軽く咳払いし、信号が変わるまで赤信号をじーっと見始めた。雑念無しに。
信号が変わったと同時に、アスファルトの地面を蹴り、横断歩道を渡った。少々混雑していて走りにくい。
それから、信号はスムーズに渡れ、十数分足らずで家に着いた。自転車を所定の位置に留め、玄関の扉を開けようとした時、和喜はやはりついていなかった。