あちぃな…
蝉の声が山々に響きわたり、鳥のさえずりも耳に、体に伝わってくる。
ふと上をみると、たくましく育った木々の葉の間から太陽の光が差し込み、辺りは緑色に包まれる。
思わず深呼吸…
透き通った大地の恵みが風に乗って僕の体の中にすーっと染み渡る。
僕は目をつぶる。
体中で君を探した…
昔の今頃、君はまだまだ幼くて、ここに来てははしゃぎ、妖精のような笑顔を見せてくれた。
社会に見捨てられようと、この森だけはぼくらを見守っていてくれた。
そっと、やわらかな風に乗りながら、タンポポの種が僕の鼻の先にとまった。
そっか、君はここにいたんだね。僕はずっとそのタンポポの種をにぎっていた。