刺すように降り続く冷たい雨から身を守るように身体を丸め、教会の壁を背にうなだれる少年が居た。
(マジェンタ、か……綺麗な人だったな)
止む気配のない雨の中で、少年は“依頼人”のことを思い出していた。
リッツバーク率いる傭兵団“鷹の眼”に彼は所属している。
現在は、ある貴族の護衛の任務中で教会で一夜を明かすことになった。
雨に身を振るわせながら彼は見張りについている。
(もうじき交替だな……早く身体を拭いて寝たい)
そんな事を考えていると、後ろから活発で滑舌の良い男の声が聞こえた。
「ラーフ、交替だぜ。中に入って明日の支度整えな。」
ラーフと呼ばれた少年が振り替えると、年は17くらい、茶色い髪をオールバックにした少年が立っていた。
「そろそろ交替と思ってたんだ」
ラーフはズボンについた泥を手で払いながら立ち上がると、茶髪の少年が一声かけた。
「ラーフ、ゆっくり休め」
「ありがとう、アイゼン」
彼は笑みを浮かべると教会へと入って行った。