足に何かが当たり佳奈美は目を覚ました。
起き上がり、自分に当たった物を見て佳奈美は絶句した。
「腕ぇ・・・腕が落ちてる・・・」
肩から切断された腕がそこにはあった。
佳奈美は思わず後退りしようとしたが、目の前に黒い影が飛び込んで来た。
頭の3分の1が切断された男の死体が飛ばされて来た。
脳味噌が切断された頭蓋の切り口からドロッと血と共に流れ出る。
「ひぃ・・・いっ・・・嫌ゃあぁぁ!!!」
佳奈美は思わず悲鳴をあげて死体から目を逸らして正面の道路を見た。
その光景はまさに地獄だった。
何人もの死体が道路を紅くそして黒く埋め尽している。
しかもほとんどの死体には頭が付いてなかった。
女の首が瞳孔を見開いたまま怒りの形相で佳奈美を見ている。
そして死体のど真ん中には一人の青年が女の首筋に噛み付いて血を吸っている。
青年は佳奈美と目が合うと、女を放して殺気のこもった紅い眼光を光せながら佳奈美に近付く。
殺される。
その不安が頭に過ぎる。
逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて…
脳が体に命令する。
佳奈美は後退りしたが店のシャッターにぶつかった。
「やめてぇ・・・来ないで・・・嫌よ・・・」
震える声で必死に命乞いするが青年はお構いなしに佳奈美に詰め寄り右手で佳奈美の頬に触れる。
佳奈美は目を見開いて身震いする。
「温かいな…その緑色の目は生まれつきか?」
青年の問いに佳奈美は黙って頷く。
「そうか…だったら…」
「放してぇ…」
怯えた声で佳奈美は青年の手を振りほどいた。
頬に一筋の涙が流れる。
すると青年の紅い瞳は茶色に戻り、殺気は消えた。
「うっ・・・うぅ・・・」
佳奈美はうつむいて嗚咽をあげる。
「悪い…怖かっただろう…」
青年はそう言うと佳奈美の頭を撫でて佳奈美を抱き上げた。
その華奢な体は震えていた。
「嫌…いゃだ・・・」
佳奈美がそう言うと青年はこう言って佳奈美を強く抱き締めた。
「安心しろ。」