航宙機動部隊第二章・39

まっかつ  2007-05-29投稿
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『―ならば何故彼等に経済・物質的手段を以て臨まれ無いのです?』
『知れた事を!渡した端から武器弾薬に化けるは必定!誰が好きこのんで侵略者に我が身を撃たせる援助等!倒錯を極めた暴論としか言えませんな、それこそ!』
テンペの挑発的な反問にまともにいきり立ち、実際立ち上がった公社特務は、憤激まみれに手を振り払って否定して見せた。
『私はそうは思いません』
だが、国家監察官も譲らなかった。
『どんな夷狄諸蛮にもあまねく文明の光を押し広め、その徳化に服させる―それが中央域の信ずる理念ではありませんでしたか?現に武力を以て討伐するより食糧や教育を与えて懐柔する方が、完勝が望めませんか?しかも、一人の犠牲もなく。どれだけ武器弾薬があろうとも、或いは沢山の兵士を抱えていても、そうすれば恐るるに価しなくはなりませんか?肝心の闘争心さえ奪えば―そう、それこそ猛獣すら飼い馴らせるのですから』
『奴等は猛獣程単純ではない!また猛獣よりも遥かに頑固だ!七0年もかけて莫大な労力を費やしてここまで来た国取り事業をそう易々と放棄する物か!』
真っ赤になった顔で、言い返すエンリケの主張にも確かにかなりの真実味があった。
『皇帝始め支配層が権力を喪う提案をわざわざ受け入れると本気でお思いか!どれだけ平和・繁栄を約束されても組織が解体すれば一番損をするのはそう言った奴等ですぞ!』
厳しく指を指された少女は、しかしエンリケの期待通り黙ってうつ向いたりはしなかった。
『ではお答えします―経済支援を与えるのは最外縁五0億の星民に対してです。帝国軍四000万人には別の待遇を与えましょう』
『ほう、それは?』
少しは興奮が収まったのか、エンリケは席に戻り、代わってゴンツァガ氏が矢面に立った。
『彼等に豊かな星を与えましょう―そう、未開発ですがパレオス以上の可能性を持つ場所は幾等でも有ります。加えてその周辺宙域の警備を委ね、統合宇宙軍をそのまま武装移民にしてしまうのです。ですから、組織を解体する必要は有りませんし、支配者達の利益も損なわれません。他に最外縁の貧困層から女性も募りましょう。そうすれば後を継ぐ子孫にも不足しますまい』
これは驚天動地の大戦略だった。
少女は帝国の無力化・最外縁の解放・パレオス防衛の三つ共を一度に成し遂げてしまえと提案したのだ。

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