白い大きな翼を羽ばたかせ、人魚のアルゼはどんどん月の方向へ飛んで行きます。
海を上から見下ろしているのは不思議な感覚で、夢だった翼を持てたアルゼでしたが心の中はラエロの心配と犯してしまった罪の重さの反省でいっぱいでした。
初めて飛んだアルゼは上手く羽ばたくことができず、何度もふらつきました。そしてラエロを抱えている手も痺れてきましたが、ラエロの顔を見る度に頑張ろうという気持ちになるのでした。
何時間飛んだでしょうか…日が明けてきました。
「朝日だわ!なんて綺麗なのかしら!」
いつものアルゼならもうこの時間には人間に見つからないようにと海の底でした。
念願の青い空を飛んでいる自分が信じられませんでした。
「ラエロありがとう…。もう少しだから待ってて!」とラエロに語りかけ真っ直ぐに上へ上へと飛んでいくのでした…
しかし、どんどん飛ぶに連れてアルゼの体に異変が起こってきたのです。
やはり人魚のアルゼにとって太陽の熱と水がない環境は過酷なものだったのです。
綺麗なうろこの足も乾燥し始め痛みが襲ってきました…
「あつい…痛い…。でもラエロを送り届けるまで私は負けれないんだ…」と必死に痛みと辛さにたえ、高い高い天国を目指し、翼を羽ばたかせるのでした…