この世界のどこでもない場所に彼はいた。
彼の存在を知る者はなく、当然、彼の名を呼ぶ者もなかった。
この世界から脱した、果てなき空間は彼の姿を浮き彫りにする。
彼はこの残酷な場所で自らをこう呼んだ。
『誰でもない人』
彼は自らに名前を付けることを禁じた。
誰でもない誰かは、いつか自分に自分だけの名を呼んでくれるであろう人を待つ。
ただ祈り。
ただ信じ。
ただ待って。
漆黒の髪の青年の名は、
『誰でもない人』
彼はもうすぐ見つける。
たとえ、それがどんな結果を迎えるとしても。
彼は掴む。
ただ一つ。
唯一の存在を…
この孤独はもうすぐ終わる。
どんなエピローグを迎えても…