酸
「お前らは能力者か?」と野心的な顔をした男が話しかけてきた。男は古いジーンズをはいていて、なんとなく嫌な感じの男だった。
「そうだ。だから何なんだ?」とヒカルは挑発的に答えた。
「ならお前らは俺の獲物だァ!」と男は狂った様に言い放ち少し後ろに間合いを取った。
「なんだ?コイツ?」とヒカルがリリに問う。
「コイツはいわゆるハンターってやつよ。実際にはそんなことなんてないんだけど、闘うことによって自分の地位が上がるって勘違いしてる奴らよ。」とリリは呆れて言った。
「この俺の能力の《酸》でお前らを消す!」と男は薄緑色の水の球を左右の手の間に浮かばせなが言った。水の球の大きさはバスケットボールの倍ほどある。
水の球は2人の頭上に高く浮かんだ。そして男の両手を叩いた瞬間、水の球が爆発し、薄緑色の水が雨の様に降ってきた。
「溶けろ!くらえ!酸雨!《アシッドシャワー》」と男は狂ったように叫んだ。
「何っ!と、溶ける!」とヒカルは焦ってその場にしゃがみこんだ。
しかし薄緑色の酸の雨は降って来ない。ヒカルが空を見上げると酸の雨が凍りついていた。
そして次の瞬間、凍りつき凶器と化した無数の酸の針が男を襲いかかった。
「攻撃のレベルが低すぎるのよ!水を使った攻撃は氷魔法でカウンターができるのよね。」とリリは自信に満ちた眼をして言った。
男には無数の酸の針が刺さっている。そして刺さっていた針が体温によってとけて、男の体内に酸が入り込んだ。
「ぐあぁ!まさか、まさか俺が!こんなガキ共に!」と男は叫び倒れこんだ。体の内部が酸によって破壊されていた。
「アンタの名は?俺はヒカル。コイツはリリ。助けてやらんでもないぜ。」とヒカルは言った。
「お前は何もしなかったクセにいばるんじゃねぇ!」と男は叫んだが、少し黙った後に、「俺はモレロ。ただのハンターさ!助けてくれんだろ?」と男は目をあわさず言った。
リリの少し使える回復魔法により、応急処置は済み、モレロは動けるようにはなった。
「…すまねぇな!」と言いモレロは走って去って行った。
案外戦闘があっさりと終わってしまったことにヒカルは不満でいた。
草原を抜けた2人の前には、深く暗い森が広がっていた。
ヒカルは少し恐怖を感じたが、それを隠し、2人は森に吸い込まれるように入った。