「あぁ、やっぱりグダグダペースだ。」
反省はしていないがどうにかしなくては。
俺の名は片桐篤。いつの間にか年上好きを認定されてしまった高校一年生だ。
「今まで男二人で考えてたから結果が付いてこなかったのだ。」
と、辺りを見回すのは久保匠。未だに本性が分からないオタクである。
「というわけで、暇な奴この指止まれ。」
久保は人差し指を上に向けて声を上げる。そんなことして止まる奴が俺たちと同年代に…。
「とーまった!」
…いたよ。
久保の指を握る人物は笠木広人の相棒にして、奇人として有名な女子生徒。日下部佳奈理その人である。
「日下部か。実はかくかくしかじか。」
久保よ、それで伝わるのか。
「なるほどー。」
日下部は納得した様な顔で俺の全身を値踏みする様に眺め見る。
伝わったのか、あれで。
「今日はヒロトくんもミクちゃんもさっさと帰っちゃったし、暇なんで付き合いましょう!」
「やったな片桐!日下部の手を借りたなら俺たちに負けはない!」
変人が二人になってしまった。
というか日下部が加わったからってなんなんだ?
「さて日下部、どう思う?」
「そうですね、私が思うに…。」
俺の話を聞く事なく、会話は進む。
「片桐くんは高望みなのでは?」
「…だそうだ。どうだ片桐?」
…どうだろう。というか俺、この二人に自分の好みを言っただろうか。
「貴重な女子の意見だぞ、肝に銘じておけ。」
「待て、お前ら俺の好みを知っていてそんなことを言うのか?」
久保と日下部が顔を見合わせる。
「「なんとなく?」」
そしてハモらせる。
「なんとなくで文句言われたのか俺は。」
「文句だなんて。只考え得ることを言ってみただけですよ。」
「貴重な女子の意見だぞ。肝に」
「しつこい!」
全く、こんな変人どもに付き合ってたら俺の幸せがどんどん遠ざかってる気がしてならん。
「宇崎先輩と仲いいらしいですけど、それはどうなんです?」
「贅沢なことに迷惑だそうだ。」
また勝手なこと言ってるし。
「あの人とはそんなじゃない。俺が只勝手に恨まれてるだけだ。」つまらなそうに二人が明後日を見る。
「そこから発展させようと思えばできるでしょうに。」
「む?しかしあの男子が彼氏では?」
俺も和真先輩の凶悪な顔を思い出す。
そんな時、背中に寒気が走ると同時に、教室の扉が開かれた。