航宙機動部隊第二章・41

まっかつ  2007-05-30投稿
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それから僅か三時間後―リク=ウル=カルンダハラはもう仕事を再開していた。
開きっ放しのパネルカードに小休止すら与えず、彼は公人用機密回線にアクセスを命じた。
茶色い光沢に満ちた漆塗りの唐机の上に2Dホログラムが呼び出し表示を灯し始め―\r
南部鉄器を模した中々渋味のある電子ジャーから注いだ湯でこの日十何杯目かの緑茶を入れ終えたのと同じくして、目当ての相手が画像に映った。
『よう、カルか?久しぶりだな』
仲間内のあだ名を口にしながら少年に挨拶して来たのは、中央域に残した同胞にして戦友だった。
『おや?あの娘は居ないのか?お前一人か?』
れっきとした共和国星民だった。
リクよりも更に洗練された容姿と、安定感のある人柄の持ち主だった。
『変わりは無いか、カイシャン?』
万余光年を挟んでも、頼もしい仲間の姿を目にすると、期せずしてリクの顔もほころぶ。
『ああ、ドルゴンも相変わらずだ。忙しいがな。だが嬉しがってたぞ?今やお前は我が隊の出世頭だからな』
カイシャンも共和国宙邦《グルン》特有の軍事貴族の出だった。
しかもかなりの名門で、それに相応しい武芸・教育も徹底的に叩き込まれている。
ドルゴン率いる子弟集団の中で彼はNO.2を任され、又それに価するだけの実力を有していた。
実際格闘戦の技量では最強と言って良かった。
ドルゴンですら寸毫の差を譲らなければならなかったし、一応NO.3のリクに至っては、瞬殺を手加減して貰ってようやく気絶と言う有り様だ。
だが―\r
『勿論俺もだ。お前が頑張ってくれているお陰で鼻が高い』
幸いにして、或いは家柄の良さなのか、好青年の彼が己の才覚を鼻にかけた例しがなかった。
最も、実戦時には鬼神以外の何者でも無くなるのだが。
『何をおのろけを―島流しの身だよ、俺は』
リクの幸運なり強気なりの基盤はここに有った。
将来を共にするべき青年団でも、とびきりの逸材達に、観戦武官は不思議と恵まれていたのだ。
『なあ、カイシャン。早速だが、聞きたい事が有ってな―帝国が攻めて来るとして、いまいちピンと来ないんだ。俺の見立てではどうやったって向こうの半数はやられる。だが、連中だってその位分かってるだろう?それでも闘うとして、まともなやり方だけでは来ない筈だ―そこでお前の知恵を借りたいんだ』



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