「でも、夢の中で会うんだ!コーチに。だってさぁ、柳コーチだってこんなののぞんでなんか・・」
「もういい。おまえのはなしきいてっと、むしずが走る!かってにいってろ!俺はもうあの世界にはもどらねぇぞ。」
巧はこの話をするといつも機嫌が悪くなる。この原因も野球と別れたきっかけも、ぜんぶあの事件だ。あの事件さえなければ・・・
ポンとだれかにかたをたたかれた。
「まぁたおこらしちゃったのぉ。たくみ、ああなるとてぇつけられないよぉ」
ゆなだった。本名は、坂本 夢夏だ。僕の幼馴染だ。
「そんなこと、わかってるよ」
「ほんとに??わかろうとしてる??野球またやりたいんでしょ?また遠回りに夢でみたなんてうそつかなくたって、巧はさぁ・・」
「いいだろ?べつに。巧の事だってオレは十分わかってるつもりだ!」
「また、祐樹はつもりでおわらせちゃうんだぁ。そうやってあのときだってこうかいしたのにねぇぇ・・・」
「うるさいなぁ!」
僕は怒りに任せて戸を閉めた。ぼくもまた、たくみとおなじくあの事件からはなれられずにいる一人だった。
僕は、教室を出て屋上へむかった。