「この部分、いらないかもな。」
改めて思う。
俺の名は片桐篤。変人二人に連れられてファーストフード店の前までやってきた所だ。
「チーズのセットな。」
と、俺に金を渡すのが変人その1久保匠。
「てりやきー。」
更に金を渡すのが変人その2日下部佳奈理。
二人は俺を行列に並ばせ、さっさと二階の食事席に上がってしまった。
分担としてはいいが、話し合いぐらいしようよ。
そんな時、背後から聞き慣れた声が聞こえた。
「じゃ和真、よろしく。」
振り返ってみると宇崎由良が二階に上がっていく所だった。
そして、俺の後ろに並んだのは若干暗い顔の和真先輩。凶悪フェイスはいつもの通り。
「ん?片桐か。」
あちらから気付いたようで、声を掛けてくれる。
俺の名前は由良先輩から聞いたりしたのだろう。
「どもっす。デートですか?」
その言葉に和真先輩の落ち込みオーラが何割か増す。
「…は、ははは。由良とはそんなじゃないよ。…昼食一回で恋愛相談一回、だそうでな。」
大変だ。和真先輩がなんか泣きそうだ。
「…デートに誘えぬまま、バレー部が合宿に入ってしまうし、由良が提示した未来像が現実になりかねん。」
コメントは控えて、俺は黙って列に並ぶ。
世間の誰もが恋の悩みはあるみたいだな。
三人分の食事を持って二階に上がると、窓際に由良先輩を確認。
近付くような愚かな行為はしない。多少機嫌が良さげだからってそれが長続きするとは限らない。
見渡せば、反対側の奥の席に久保達がいた。近くなくてよかった。
「…じゃあな片桐。」
「って!怖いですって!」
気配を消して立たないで欲しい。
「どよんとしたオーラも隠してください。マジで恐いです。」
「お前、いろいろと正直だな。…まぁ由良の手前、装うさ。殴られちまう。」
苦笑とともに和真先輩は窓際の席に近付いていった。何やら親近感が湧いたな。
さて、俺も連れの元にでも…。
「違う違う、ここはこうだ。」
「え?こう、ですか?」
変人ズはテーブルに備え付けられた紙ナプキンで折り紙をしていた。作品でテーブルが埋もれる位。
えっと、他人のフリ他人のフリ…。
こっそり離れた席に座ろうとすれば、目敏く久保が俺を見つける。
「おい片桐どこへ行く。お前の席はここだ。」
「そうですよ、そして不切正方形一枚折りを極めましょう。」
窓際の方がまだマシだったかもしれん。